草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

キクイタダキ

キクイタダキ」、それは「頭の上に黄色い菊の花びらを載せているように見える」ところで付いた名前なのだそうだ。確かに、よく見ると頭の中央に小さく”黄色い鶏冠(とさか)”のような羽毛があり、時々それを逆立てるように見える。

 3月の末の頃、松の枝間で小さな鳥がチョロチョロと見え隠れしていた。メジロ?と思い立ち止まって観察すると、メジロほど緑が目立たない小さな鳥である。しばらく立ち止まって枝間に顔を出すのを待つが、なにしろせわしなく動き回ってなかなか双眼鏡の視野に捉えられない。どうにか近くの枝に一瞬止まったのを捉えると、メジロよりも一回り小さく見える。頭のてっぺんに黄色が載っており、キクイタダキだ。

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木の中で枝から枝へと忙しく飛び移り、なかなか外側に出て来ない。

 その姿を捉えるには、木の内側を下から見上げる形で屈みこんで、葉や枝と重ならない位置に止まってくれるまで、根気よく待つしかない。近くのクロガネモチの木に移ったところを、そんな風にして下から見上げた。かなり細い枝にも止まり、逆さまにぶら下がるようにして近くの枝をつついている。

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時には葉っぱに止まろうとして、さすがに止まり切れず、慌てて落ちまいとして羽搏きバランスを立て直す。結局その葉を掴んだまま、その後しばらく餌を探し続けた。小さく軽い体なればこそ、それが可能となる。

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 別の所で、まだ葉の芽が出始めたばかりのイロハモミジの枝にキクイタダキの群れを見つけた。

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まだ葉が拡がってないので木の中の見通しが良く、枝を渡り歩く様子がよく見える。キクイタダキの動きが見えれば、渡る方向を予測し、手前に出て来そうなところに山を張ってレンズを向けることも可能。そして、何とか枝被りのない位置でその姿を捉えることが出来た。

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イロハモミジの葉の芽が薄っすらと赤味を帯び、背景を彩ってくれた。

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自分を狙うカメラに気付いたのか、ぐっとレンズ越しに正面から睨まれると、結構厳しく鋭い顔つきをしている。

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 群れの中の一羽がスッと枝から離れ、向うの溝の中に消えた。あれっ?あそこに何かあったかなと、少し離れた位置からその溝をそっと覗き込む。溝に流れる浅い水の中に下りたキクイタダキは、明るい陽射しを受けながら水浴びをしていた。

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羽を細かく震わせ、盛んに水しぶきを周りに飛び散らす。

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頭を何度も水に突っ込み、それはなかなか激しい水浴びであった。