草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

ヤツガシラ

今年の春、この辺りではシギチ(シギやチドリ)の渡りが不調。毎年ともかく姿を見せていたセイタカシギすら、一羽も出会わなかった。このまま7月も何も無いのは寂しいと、不本意ながら3月末のヤツガシラを載せることにした。

 ヤツガシラは長年見たかった鳥で、今年がやっと初見。毎年、情報をもらうもののすぐに出かけられず、週末を待つ間にどこかに移動してしまうという繰り返しだった。今年もやはり3日後くらいに出掛け、情報通りの場所には見当たらず徒労に終わると諦めていた。

 野鳥は「見られるときには見られるもの」なのだ。運と言うか定めと言うか、諦めた瞬間に携帯で情報が入った。別の場所で今見ている最中だという。途中まで来ていたのですぐに合流できた。道端に車が止まり野原の奥に人が居たから分かったが、一人で通りすがれば確実に見逃していた。そっと近づくと、野原の奥の藪のはずれに一羽のヤツガシラがとまっていた。 

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待ちに待ったヤツガシラの姿だが、蔓や枝に囲まれた奥では感激も今一つ。何とか広い草原にでも降りてくれないかと、ひたすら待つのみ。

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 やはり鳥見は辛抱が肝要。そのうち藪から飛び出したと思うと、海の近くの狭い草っぱらに着地した。良しこれで緑の草にヤツガシラが映えると期待したも束の間、2・3回シャッターを切る間に元居た藪の向こうに飛んで行ってしまった。でも、ともかく草に下りたヤツガシラの写真を2・3枚撮ることが出来た。

 しばらく他の場所を周って戻って来ると、ヤツガシラは別の道端に降りて虫か何かを探しているようだった。

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何人かのカメラマンがレンズを向けていたが、そんなことは気にならない様子。それでも時々は顔を上げて、周りを見回した。そこから近づくな!とでも言うように。

 「だるまさんが・・・、ころんだ!!」

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「だれも動いていないな!・・・」と。

 初めて逢うことが出来たことで、そろそろ満足して戻ろうかと帰り道に掛かった時、今度は別の海岸にもう一羽ヤツガシラがいると情報が入る。「出会うときには出会うもの」と思いつつ、そちらに向かった。

 海岸に拡がる緑の芝の上をヤツガシラが歩いていた。

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ハクセキレイが近くにいるので落ち着いている様子。こちらの個体はかなり警戒心が強くて、近づこうとするとすぐに遠くへと逃げていく。遠目で見るしかないが、波辺の広い草地に特徴のあるオレンジの鳥がポツンと佇む光景も、それはそれでなかなか味わい深い。こちらの景色の方がヤツガシラには似合っているように見えた。

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 最後に浜辺のランニングする少年が近づき、ヤツガシラは目の前を横切って飛翔姿も見せてくれた。レンズで追い切れずブレとボケ混じりの写真となってしまったが、羽を拡げると白黒の縞模様が印象的な鳥だった。

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 ともかくも、飛ぶところまで目撃したのだから、お初の出会いとしては上々の気分で帰り道につくことが出来た。来年また会えることを願って。