草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

セイタカシギの水浴び

水田にセイタカシギが座り込んでいた。いつも長い脚で歩き回っている姿しか見たことが無かったので、一瞬、怪我でもしたのかと思った。数日前に、腹部に大怪我を負ってふらふらと元気なく佇んでいるセイタカシギを見たことがあったし、ハヤブサセイタカシギの群れを襲う瞬間も目撃したこともある。立てないほど弱ってるのだろうか?

 しばらく見ていると、座っていたのが立ち上がり、交替に隣で立っていたセイタカシギが座り込む。どうやら、怪我ではなさそうだ。晴れ上がった日の昼過ぎでもあり、セイタカシギ達も暑さに耐えきれず、水に座り込んで体を冷やしているのだろうか? そんなことを考えながら、ゆっくりと近づいた。すると、ただ座り込んでいるのではなく、双眼鏡で見るとセイタカシギは時々翼を震わせ、水飛沫を飛び散らせていた。

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ふうん、セイタカシギも水浴びをするんだ。考えてみれば当然でもあるが、あの長い脚を折りたたみ浅い水にペタリと座り込むとは考えたことがなかった。脚を折りたたむその動作は、何となくぎこちなさそうに見える。座り込んだまま翼をだらりと水に広げたセイタカシギは、そのまま水中で翼を動かして、まるで水洗いでもしているかの様子。

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羽根の洗濯が終わると立ち上がり、水を切るために思い切り翼を広げた。

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そしてそのまま、後ろへ、前へ、と思い切り翼を羽搏かせ水滴を振り飛ばした。

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さらにもう一振り。翼を思い切り上下に動かした時、細い体がフワッと浮き上がった。

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 この春は、この干拓の水田では毎日のように、延べで50羽以上のセイタカシギに出会ったのだが、水浴びを見たのはこの日この時のみ。車を止めた30分足らずの間に、数羽のセイタカシギが次々に座り込んで水浴びを披露してくれた。中には、浅い水に体を出来るだけ多く浸けようと水中に横倒しになり、溺れてるかのようにもがくものも。

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やはりあの午後はセイタカシギにも暑くてやりきれなかったのだろう、と思うことにした。