オオハム
3月半ば頃、「海岸の堤防のすぐ近くをオオハムらしき鳥が悠々と泳いでいる」との報せで駆け付けると、遥か遠くの波の上にオオハムの白い腹部が見え隠れするだけ。その場は一旦諦めた。再び夕方に来ると、オオハムと確認できる距離で夕陽に照らされ羽繕いをしていた。羽繕いを終えると羽を拡げバタバタ。カモの2倍ほどの体はいかにも重そうで、首を突き出して羽搏くがお尻の方は水に沈んでいる。
次の日は昼頃にオオハムを見つけたが、やはり遠い。少しは近づこうと堤防を歩き回るうちに、やがて姿が見えなくなった。あわてて双眼鏡で探しまわっていると、海に浮かぶカモたちの間を水切りの石のように小さなしぶきを上げながら、海面直下を動き回る何かがいた。その姿を追いかけつつ、もしや?と期待する。
少し浅くなると茶褐色の背中が海面に現れ、潜っているのは結構大きな水鳥と分かる。
海面下の浅い所をかなり早く泳ぎ回る様子は、カイツブリやカモではない。やはりオオハムが潜って泳ぎ回っているのか? 近くに浮いていたヒドリガモが脅えて次々に飛び立つ。潜ったままで近くまで来ると、海面に顔を出した。オオハムだ。
しきりに足で水を掻いて泳ぎまわり、時おりそれが海面に出て水しぶきを上げていた。
それにしても、潜水で進むオオハムの速さには驚いた。
魚をくわえて顔を出してくれるのだはと期待したが、結局それは叶わなかった。しばらく離れた間に餌を食べ満足したのだろう、再び堤防に戻るとオオハムは白い腹を上にして浮かび、しきりに羽繕いをしていた。
そして羽繕いが終わると、やはり首を前に突き出し昨日と同じ羽搏きを繰り返した。
この時期の日本海側でオオハムを探したこともあったが、居ても波の大きな日本海の沖で浮かんでいる姿を見られるだけ。瀬戸内側の波の小さな、それも堤防から見下ろすほど近くで見られるとは。しかも海面下を潜って泳ぎ回るオオハムを見られるとは想像もしてなかった。「今年は春から・・・?」、本当に運が良い2日間だった。