草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

オウチュウ

 6月の初旬、仕事に出掛ける途中で干拓地に寄ってみた。干拓地を一回りしたがカラスの他に何も見つからず。仕事の時間が迫って来たので探鳥を諦め、バイパスに上がろうとした時、脇の草地から黒い鳥が飛び上がり電線にとまった。

 最初はカラスだろうと思ったが、カラスにしては体が細くて小さい。尻尾が長いと分かってツバメ?とも思ったが、ツバメにしては大きすぎる。「もしかして・・・」と思いながら、バイパスに上がる道の途中に止まって窓を開けると、確かにオウチュウと確認できた。

4年前に一度近くでオウチュウを見掛けてなければ分からなかったし、ツバメにしては変な鳥だな?と思うだけでそのまま仕事に向かっただろう。4年前にも電線のオウチュウを見ていたが、その時までそのような鳥がこの辺りに来るとは思っても見なかった。

 カメラを構える間もなく後ろから車が来たので、仕方なく一度バイパスに上がって引き返す。運よく、まだ同じ場所に留まっていたオウチュウをとにかくカメラに収めた。仕事の時間は迫っていて、せっかくの機会をゆっくり観察する時間もなく、取りあえずの証拠写真だった。

 証拠写真を撮ったすぐ後、オウチュウは電線から飛んでしまったが、遠くには行かず少し離れた所の竹藪の上に止まってくれた。

電線よりはこちらの方がずっとお似合いだ。

 その1~2分後、オウチュウはその竹薮を離れ、道を隔てた隣の干拓地方面へと飛んで行った。 

 気持ちとしては、隣の干拓地に移動してもう少しオウチュウの生態を追いかけてみたいところだが、仕事の時間が迫っていてそうも行かない。仕方なくその場を離れざるを得なかった。だが、オウチュウがこの辺りに来るなんて滅多にない機会、急いで鳥見仲間に連絡し、その後の追跡と確認を頼んだ。

 仕事の後で戻って来たころには、オウチュウの姿はなかった。集まった数人で隣の干拓地を探し、餌を獲る様子なども観察できたという事だった。

 4年前に見たのは秋の終わりだったが、今回は6月のはじめ。どちらも、多分、渡りの途中に立ち寄ったのだろう。ということは、春と秋には、数は少ないがオウチュウがこの辺りを移動しているという事かもしれない。仕事への道の途中でオウチュウのような珍しい鳥に出会えるのだとすれば、今後はもっと丁寧に、そして「思わぬ出会いを期待しつつ」この辺りを周ってみることにしよう、と考えながら帰路についた。