草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

チュウカナダガン??アラスカシジュウカラガン

11月、干拓を周っている時、水路に喉元の白いガンが居ると教えられた。確かに水路に浮かぶホシハジロヒドリガモの群に混じり、大きな水鳥が5羽泳いでいる。体が黒っぽくて喉元が白いのは遠目でシジュウカラガンと思った。一緒にマガンが4羽。

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後になって「あれはチュウカナダガンらしい」と聞き、図鑑で調べるとなるほどマガンより明らかに大きいし、首の根本に白い輪っかが無い。でも、さらに数週間後に専門家による同定でアラスカシジュウカラガン幼鳥だと決着と聞いたが? そのあとに、チュウガタカナダガンという判定も。いずれもシジュウカラガンの亜種で、大きさや首の白い輪、頭の形、嘴の長さ・・という特徴を合わせて判断するらしいが、結局難しいという事だけが分かった。つまり、カナダガンの亜種で大きさは中型ということと納得。

 私には初見の鳥、遠くからの写真しかとれなかったので翌朝もう一度トライする。水路で見つけられず「もう飛んで行っちゃったかな」と一旦は気落ちしたものの、以前マガンが田んぼで餌を探していたことを思い出して、少し高い所に上がって干拓を見廻す。すると、やはり少し離れた畔の向こうで茶色っぽい大きな鳥が5・6羽ごそごそと動いていた。そっと車を移動させてカメラを向ける。間違いなく昨日の中型カナダガン亜種個体で、マガン4羽も一緒。

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幸い、特に驚く様子もなく餌を食べている様子。マガンたちはしきりに餌を探すばかりだが、カナダガン亜種個体は時折り首を伸ばして辺りを見回す。どうやら、カナダガン亜種個体が見張り役、あるいは群れの中心になっているように思えた。

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もっぱらカナダガン亜種個体ばかり追っかけていたが、すぐに一羽増えていることに気づいた。その一羽は他の4羽のマガンよりも大きく、カナダガン亜種個体とほぼ同じ大きさである。そして、増えた一羽はヒシクイだと分かった。ヒシクイはマガンの群れと一緒にいるように見えて、いま一つ仲間には入れて貰えていないようで、時々一羽だけ離れて餌を探していた。

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しばらくしてカルガモの群れが飛来し、マガン達が驚いて羽搏くと、

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少し遅れて、カナダガン亜種個体も。

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もう十分に食事を取っていたのか、やがてガン達はカルガモ達と一緒に飛び立ち、干拓の水路へと帰って行った。飛翔の写真を見て思い出したが、そう言えば人に育てられたガンの群れがライトプレーンと一緒に渡りを体験するという映画「グース」がまさにカナダガンの話だった。このカナダガンは人ならぬマガンの群れと一緒に育ち、渡りを体験しているのだろうか?などと想像。

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2・3日後に行ってみると、カナダガン亜種個体とマガン4羽はゆったりと泳いでいた。

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干潮で水路も浅くなっていたので、手前の池で時折逆立ちして餌を探しながら泳ぐ姿を見せてくれた。田んぼで一緒だったヒシクイの姿は見えず、やはりこの仲間には入れて貰えなかったようだ。これまで私はここでマガンも見たことが無かったのだが、今年はマガンに加えてカナダガン亜種個体まで見られ幸運である。ここに一か月滞在してくれたおかげで色々なバーダーや専門家の目に触れ、最終的な亜種同定まで辿り着けたということ。ここが気に入ってくれたなら、このまま越冬してくれればうれしいのだが。