草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

ハチクマの渡り

 9月中旬から10月初旬にかけて、蜂を食べる鷹・ハチクマが中国地方を縦断し西へと渡っていく。関門海峡上空を九州へ、その後は東シナ海を渡り大陸、さらに2~3か月を掛け東南アジアからインドネシアまで渡るそうだ。この数年、この時期は天気を見て近くの山頂で東から飛来するハチクマを待つ。そして西に飛び去る後ろ姿を見送る。

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午前中、上昇気流が弱い時間帯はハチクマの高度が比較的低いし、山近くで起きる気流に乗るため近づいてくれることもある。それに、前日の夜を近くの山で過ごしたハチクマが山裾から飛び立ち、目線の下からゆっくりと舞い上がって来ることも。

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そんな時にはカメラの視野一杯になるくらいの近くで舞い、ゆっくりとその姿を見せてくれる。

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十分な上昇気流があれば、大きく一回りするごとにみるみる高度を上げ、こっちは首が痛くなるほど見上げてシャッターを切るのだが、時に、陽光に透ける羽の美しさに気を取られていて、ファインダーに太陽が入りそうになり慌ててカメラを外すことになる。

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 上昇気流が山々の上に積雲を作る午後になると、ハチクマが東に連なる山地を上を超えて現れる。こちらとしては、カメラが待つ山頂近くまで滑空して高度を下げ、山頂を羽搏いて越えてくれることを待ち望むが、そんなサービス満点の鷹はシーズンに数羽。

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 ほとんどの鷹は高い高度を保ったまま西への風に乗り、驚くほどの速さで飛んで・・というより流れていく。中には、発見から見えなくなるまでの数分間、おそらく数キロの距離を一度も羽搏かずに流れていく鷹もいる。目視できる高度を行ってくれればいいが、双眼鏡を使っても芥子粒のようにしか見えない高さを流れて行く鷹もいる。そうなるとたまたま双眼鏡を向けて発見できればいいが、中には視野の端に写りこんだ鷹を後で写真を見て初めて後で気づいたというケースも。一応、発見できた鷹の数を記録しているが、ここまで高い所を飛ばれると、数人がかりいくら目を凝らして探しても見逃しがあるのは仕方ないと、実感。

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高い空を雲を横切って飛ぶ鷹は、さらにその速さを実感できる。

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おそらく彼らには、遠く関門海峡や北九州の山々がハッキリと見えているだろう。そして眼下の地形に目もくれず、遥か遠くの目印を見据え方角だけを微調整しながら真っ直ぐに流れて行くようだ。小さな地形変化に目もくれず、羽搏きもせず風に身を預け、翼の僅かな調整だけで、高度を保って飛航する姿に憧れも湧く。さぞかし気持ち良いだろうと想像し、無事目的地まで行きつけよ・・と。

 それでも少しずつ高度が下がるのか、あるいはさらに良い風を求めてか、その高い高度をさらに上げようと上昇気流を捕まえ鷹柱ができる。そうなると、もう、双眼鏡で見ても芥子粒である。やがて柱のてっぺんから順に風を捉え、1列または2列の編隊飛行に移って流れ始める。

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 此処を通過する鷹は主にハチクマだが、時にはノスリハイタカ、ツミも混じる。さらに、本州から四国・九州・奄美へと流れることで有名な鷹・サシバも時々現れる。数百羽も見るうちに、それぞれの鳥の大きさやシルエットの特徴だけでなく、飛び方や飛ぶルートのチョットした違いに以前よりは気づけるようになってきたが、まだやはり、写真で確認できるのが一番だ。

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鷹の渡りを知って以来、たまたまそのルート近くに暮らしている幸運に感謝している。今年は昨年のように千羽/日という大当たりに恵まれなかったが、鷹たちには来年もその雄姿を見せて欲しいものである。