草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

ツルシギ(夏羽)

4月が終わる頃、数十羽のカラスが田植えの始まった干拓のあちこちに屯していた。干拓の奥の方にもカラスが20羽近く見え、その奥に黒い鳥が水の中を歩いていたが、近づくまでは「あれもカラスだろう」と思っていた。念のためにと思って双眼鏡で覗くと「明らかにカラスとは違う」、シギ類の細長い嘴と長い脚が見えた。

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 慌て車を進めつつ「あんな全身黒いシギなどまだ見たこと無い、はたして何だろうか?」と考える。頭の中で図鑑の絵をいろいろとめくるうちに、ふと思い当たったのがツルシギ。図鑑で見た黒い夏羽のツルシギの写真が思い浮かぶ。その時、「黒い夏羽のツルシギ」とは実際どんな感じに見えるのか?と思ったことを覚えていた。「ツルシギかも知れない」とひそかに期待しつつ、さらに近付くと双眼鏡で確認。

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全身黒に多くの白い斑点、根本近くだけ赤い嘴。図鑑のツルシギ夏羽そのものだった。

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 3羽のツルシギは水田の中を散らばったり集まったりして、餌を探し歩く。

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 しかし、3羽が互いに近づいてくると何故かくっつきあって一塊りとなり、しばらくの間は揃って同一方向に競うように歩き始める。

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 冬羽のツルシギは複数での群れに出会ったことが無く、そんな動きがツルシギのいつもの習性なのかどうかは分からない。しかし、しばらくその様子を見ていて滑稽に思え、印象的だった。

 ふとカラスか何かに驚き飛び立ったが、それも3羽揃ってである。翼を広げると、裏側の白さが際立つ。翼の先の方は少し色が薄く、茶色く見えた。

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 ツルシギたちは水田の上を低く飛び、30mくらい離れたところに着地する。

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種類によってはバラバラに離れて着地するシギもいると思うのだが、このツルシギたちはやはり近くにかたまって舞い降りた。初めて訪れた見知らぬ広い干拓の真ん中で、どこか怖がってくっつき合っているようにも見えた。