草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

鷹の渡り

今年も西に向かって渡っていく鷹を観察した。この辺りを渡っていく鷹は、時折りサシバノスリが混じるものの、ほとんどがハチクマである。東の山々から現れて頭上を飛んでいく時、東の雲間に見えたかと思うとはるか上空を羽搏きもせずに通り過ぎる時、天候や時間によって現れ方は異なるが、どれにしても風や上昇気流に乗って大空に舞う姿を見せられると、人間どもには「羨ましい」の一言しかない。

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 時々、わりと低く、300m足らずの山の山頂付近の高さで飛んでくれるものもいる。そんな時には比較的近く、ハチクマの顔つきまでが見えるような気がする。

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 我々が待つ山頂の近くで上昇気流がある時には、東の山や平野の上空からそれを目掛けて来て、目の前で優雅に舞い上がっていく。旋回の途中ではハチクマの背中が朝日に照らされて輝くように見える。

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 背景の山にピントが合ってしまうので、フォーカスぴったりの写真はなかなか撮りにくいのだが、

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そのまま眼下の森の上を羽搏きながら通り過ぎるものもある。雲が多く小雨混じりのような日は、そんなハチクマが多くなる。ずっと羽搏いて飛んでいくハチクマを見ていると、こんな日はゆっくり休んで体力を回復し、晴天の上昇気流に乗って楽に行った方が良いのに、と言いたくなる。

 我々が待ち望むのは、白い雲がぽかりぽかりと浮かぶ晴天の日、東の空に時折り現れる数十羽の鷹柱である。遠くの空では見えにくいばかりか、舞い上がりながら角度が変わり見えてり消えたりする鷹の数を数えるのは難しい。

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その後近づいて来れば近くで数え直すことになるのだが、鷹柱がいつも自分たちの方に向かって近づいてくれるとは限らない。風向きによって、時には発見した位置から南の方角に遠ざかり見えなくなってしまうこともある。

 東から鷹柱が近づいてくると、やがてその柱の上端からこちらに向かって真っすぐに滑空し始める。まるで飛行機の編隊飛行のように、前後や左右に並んで頭上に飛来するハチクマを見上げて、その雄大で感動的な光景に見とれてしまうのだ。

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肉眼で模様が分かるくらいの高さを飛んでくれるとき、羽搏きもせず優雅に空を舞うその生き物を見送る人間たちから、思わずため息が洩れる。双眼鏡で眺めていると、ハチクマの中には、明らかにこちらを観察しながら通り過ぎるものもいる。ハチクマにとってみても、山の上に何人も集まって自分たちを見上げる(中には手を振る者も)集団に対して、どこか怪訝な思いがあるのかもしれない。

 時々、どこかハチクマとは違ったコースを通ったり、異なる飛び方をする鷹もある。見慣れて来ると徐々に見分けるようになってくるが、サシバもそんな鷹の一つだ。

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 ハイタカは、明らかに小さく腹が白く見える。

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ただ、大きさも色合いも似ている鷹としてツミも渡っていくので注意が必要。大きなハチクマに突っかかっていくような明らかな行動があれば、ツミだと分かるのだが。

 観察している期間中に1羽か2羽だけ通り過ぎる珍しいタカもいる。アカハラダカ。長崎では一日数千羽が渡る日もあるそうだが、ここではほぼ見られない。でも突然現れることもあり、見慣れぬ動きをするタカには一応これを頭の隅に置いて確認・・のはずが、いつも忘れてしまう。で、せっかく出てくれてもシャッターチャンスを逃すことに。今年も一羽目の時はカメラを車に置きっぱなし、双眼鏡で確認し「アカハラ」と叫んだものの、ファインダーを覗いた時には遠く飛び去るシルエットだった。

 二度目?は何となくハヤブサかな?でも変だな?と思いつつ撮っておいたもの。写真を見てそれと分かった、翼の先だけ黒い小型のタカの画像。高くてピントもいま一つ。

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来年の遭遇の時は、カメラを手元に置いておきたいものだ(毎年そう思ってはいるのだが・・)。

 時期が遅くなると、ノスリの数が増えて来る。しかし、往々にして、ノスリの現れる方角や目指す方向が、その日のハチクマの飛ぶコースとは微妙に違っているように思える。同じく西を目指しているはずなのに、何がこの違いの原因なのか、不思議である。

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ノスリは少しズングリした印象がある。やはり、地上で見上げる人間どもをじっと観察しながら2回3回と旋回し、高度を上げて通り過ぎた。

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下から見るとかなり白く見え、さらに羽裏の黒い斑点、腹巻のような黒っぽい帯が目立つので区別は容易である。

 今年は前半に北風が強かったせいか、期待したより鷹の数が少なかった。また来年に期待しよう。