草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

セイタカシギ

4月中旬から5月初旬にかけてセイタカシギが通り過ぎる。

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 今年は、この辺りにはやけに多くのセイタカシギがやって来た。いつもは2~3羽に出会えるだけでも嬉しい気分になるのだが、今年は延べ70羽にもなり「またセイタカシギか、ここにもセイタカシギが・・」と思うほどに多かった。もちろん、日をまたぎ重複して数えたものを含むが、それでも40個体以上には出会っていると思われる。

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 水が張られた干拓の水田でよく出会うが、今年は一つの田に4~5羽は当たり前、多い時には12羽のセイタカシギが一度に一つの田を歩き回っていたこともあった。一羽だけでも優雅さを感じさせるセイタカシギだが、数が多くなると、一段と優雅さが増、さながら鳥のバレエ団が舞い降りたような雰囲気である。野鳥に興味を持ち始めたばかりでこのシギの存在も知らぬ頃、近くの沼地で偶然に出会った時には、一瞬造り物が置いてあるかと疑ったものだ。なんと脚の長い鳥、それも、曲げると今にも折れそうに細い脚。こんな鳥が、毎年知らぬ間にすぐ近くの田や沼を訪れ、通り過ぎていたとは。

 どちらかというと田植え前の、代掻きが終わったばかりの田が好みらしい。餌が多く見つかるのだろう。30分ほど歩き回ると、互いに集り、一本足で休みを取る。

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まだ餌取に夢中の1羽以外は、明るい陽射しの中でしばらく仮眠中。

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 綺麗に撮るには、もちろん晴れた日、太陽の角度も風の具合も重要である。近くで見るとセイタカシギの眼は赤く、黒い瞳がはっきり見える。

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優雅な足取りで水田をゆっくりと歩き廻り、水に嘴を突き刺して餌を捕まえた。はっきりと見えないが、捕まったのは水中にいる何かの虫のように見えた。

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 今年は出会う個体数も回数も多く、ゆっくりと撮影できる機会もあった。休憩しながら時々羽繕いしたり、頭や首筋を掻く様子も。長い脚を折り曲げて頭や首筋を掻く様子は、何となく危なっかしく見えてしまう。

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 時には水田から出、水路にあるコンクリートの上に集まって休む光景にも遭遇。

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なんと、5m程度の範囲に8羽が集まっている。重なり合うピンクの脚が、バレリーナの印象を一段と強調する。

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コンクリートの上に立つと、いつも水の中に隠れている趾まではっきりと見える。この長い脚をのんびりと眺めながら、ふと、鳥類の脚では膝(?)が我々とは逆、前にではなく後に折れることに気づいた。ヒトで言えば、「脚を折る」ではなく「腕立て伏せ」の曲がり方。これまで何気なく見ていた鳥の脚、当然ながら「スズメもカラスも含め、これまで見た鳥すべて同じだ」と思い返しながら。