草季想風

草に季節をたずね、季節に風を想う

キリアイ

潮が引き、ほとんどの水鳥が遠い海岸線に去ってしまった中、ふと下を覗き込むと、堤防沿いの狭い流れの畔を、小さな水鳥がしきりに泥に嘴を突き刺しながら歩いていた。望遠レンズで覗くと、キリアイだ。数日前に陽の落ちた薄暗い中で見つけたのと同じ個体だろうか、今日は真昼の明るい中で、じっくりと見ることができた。

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ほとんどの水鳥は人が堤防から顔を出した途端に一瞬立ちすくみ、下手をするとすぐに飛び去ってしまうのだが、このキリアイという鳥、人影にも望遠レンズにも全く動じない。立ちすくむどころか、「どうせここまで下りては来ないだろ、こちとら餌探しに忙しくて、人間なんかかまっちゃいられないよ・・・」とでも言いたげに、ほぼ堤防の真下に来ても立ち止まることすらない。こりゃ有難い、と撮り続ける中、10分以上、堤防から撮る私の眼下を右へ行き左へ行きして餌採りに没頭していた。

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キリアイの見分け方は「嘴の先がちょっと下に曲がっている」ことと教わったのだが、忙しく向きを変え盛んに嘴を泥に突き刺している状況では、中々その嘴の先の曲がりを見極めることが難しい。せっかく嘴を抜いてくれたとしても、その嘴に泥がくっつき”曲がり具合”がよく分からない。「先が曲がってるか・・・曲がってないか・・・?」と見つめるうちに、ハマシギでさえその嘴の先が曲がってるように見えてくる。そんなことを思いつつ撮った画像の中に、嘴が少し開いて隙間ができたものがあった。その隙間を見ると、”キリアイの嘴の先曲がり”がよく分かった。

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しかし、実際のフィールドでは、そんな一瞬に出来る隙間を見極めるのはまず不可能。撮り続けるうち思ったのが、キリアイの頭にある特徴的な縦縞模様。これの方がもっと良い目印になるのではないか。さらに、堤防の人影に怯えもせず平然と我が道を行く肝の座りようも。

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また、嘴を根元まで突き刺して思い切り首を捻る仕草も特徴になりそうだ。何かを力づくでこじ開けようというのか?他の鳥も餌を採る時、少しくらいは首を捻ることもあるが、キリアイのそれは尋常じゃない。自分の方がひっくり返るのじゃないかと思うくらいに大きく捻る。「そんなにひどく嘴を使うから、先が曲がっちゃったんじゃないか!」と、思わす呟いた。